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画廊シェーネの
『たまさか よもやま考』
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★2015年9月


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-2015年秋・彼岸を迎えて、故・彫刻家 福本 晴男追悼- 



私が、その作品のみならず作家の思考や生き方など 全人格的なものというか、その精神性というか、
直感人間たるこの私が、その魅力溢れる資質に、いたく惹かれ、敬服し、少なからず、
影響という影をたなごころに密かに納め、大切に育んできた作家は、
実は故・画家安徳 瑛の他に、もう一人いる。いやいた。

彫刻家:福本 晴男(元創型会・会員)である。
残念なことに、私にとって重要なこの作家も、かっての安徳 瑛と同様、
昨年(2014年9月)又失ってしまうことになり、一年目の彼岸を迎えた。

福本 晴男に出遭って(まさに・・・)から、20数年を過ぎようとしている。
その日、銀座8丁目にある彫刻専門画廊「ギャラリーせいほう」で
福本 晴男の個展が開催されていた。
日頃、銀座では、めったに歩くことのない、このあたりに何故か、自然に導かれるように足が向き、
気がつくとこの店のドアをくぐっていた。

抽象具象を問わず、展示されていた全ての作品が、冗長な点が微塵も見られず、
一部の作品では、金属を用いていながら、古木とのほどよい折り合いの中で
一般の彫刻作品によくみられる金属特有の、あの身の毛も逆立つ
非情で理知的過ぎる冷たさというものは、一切感じられず、
すくっとした、気品ある美しさに、なんとも高貴な香りがして、
私以外誰もいない会場で、久しぶりに優雅な気持ちで
満たされていく自分自身に気が付いて、酔いしれていた。

その時、どうしても手元において置きたいと、価格も気にせず
当然ながら、値切り交渉など思いつくことも無く、
「衝動買い」してしまったのが、写真の「龍を持つ少女」である。

この作品の購入をご縁に、作家自身と知己を得て、その後
埼玉・深谷のご自宅にも伺うようになり、
実に美しい奥様からも厚遇を得、手作りの無農薬野菜なども、
たくさん頂戴するようにもなった。

当時は、私の懐具合も比較的暖かい時代であったので、
出来れば、もっとたくさんの作品を所蔵したいと考えていたが
何せ、この作家は、寡作の上に、作る作品は、非売品ばかりで、
私の希望は、なかなか果たされ無いまま時は過ぎ、
購入の機会もいつしか失ない、現在、福本晴男の作品は、
平面を含めて10数点ほどを所蔵するのみである。

この作品は、危うく手放しそうになった時が、2度あった。

一度目は、安徳 瑛が、「これは、とても優れた作品なので、
出来れば、自分の50号以上の代表作品と是非交換して欲しい!」
といった時、・・・・
二度目は、私の画廊のコレクターに写真を迂闊にも、
見せたことが起因して「奥田さんが好きな金額をつけてよいから
譲って欲しい」といわれた時・・・・
である。

出遭いの後しばらくして、気が付いたことであったが、福本 晴男と安徳 瑛は
偶然にも、1940年・辰年生まれの同じ年であった。
安徳 瑛が1996年に亡くなってから、天啓といっても過言でない
この二人との繋がれた糸を生かしつつ
限られたスペースの中で、当画廊でも、なんとか工夫して
福本彫刻が生きるような企画が出来ないかと暗中模索して来た重要作家であるので
この作品は、ずっと手放さず死守してきた。
現在、この作品は、正月だけ作品倉庫から出して1年に一回だけ
お披露目している。無論非売品である。

2015年9月23日  お彼岸を迎えて
 画廊シェーネ 店主 奥田 聰 

(注:この文章は、2014年9月26日、Facebookへの投稿文に一部加筆したものである)
2015年9月28日 記述