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ロドニー・ツエレンカ展(日本初個展)』

ご挨拶
 
1989年11月吉日

画廊シェーネ   奥田 聰

この度、当画廊シェーネでは別紙のご案内の通りパナマの新星、
ロドニー・ツエレンカの日本初個展を開催できる運びとなりました。
ここに作家のプロフィールをご案内方々ご挨拶申し上げます。

ロドニー・ツエレンカは、今年36歳になる パナマ期待の大物作家である。
父親はオーストリア、母親はドイツ生まれのユダヤ系の家系に生まれパナマで育った。
多くのユダヤ人達がそうであるように、彼も幼い頃より貿易商の父親の仕事の関係で
世界中(欧州、北米、南米、アフリカ、中東、オセアニア、アジアなど40を超える国々)
を巡り、現在イスラエル語は無論、英語、独語、スペイン語を理解するのに
苦痛は無い。早熟多感な作家は、すでに6歳の時に観たイタリアや
スペイン、ニューヨークにおける美術館での印象が,とりわけ強く今日まで影響を
及ぼしてきたと語っている。来日は1970年(作家17歳の時)が最初であるが、
これを契機に精神と肉体の一如を求めて20歳より始めた空手は、現在3段の腕前である。

彼の興味あるテーマは、視覚的に認知の出来ない、直観の世界、精神的世界
であり、人間の知識を超越した自由で、無限、宇宙的規模に相応する精神世界の
存在が、現実の世界に代わるものとして意味のあるものと考えている。

彼の創作への意欲も、限りなくイマジネーションを働かすことで
別世界の創造と新しい芸術を生み出す可能性を無限に拡げることが出来るという
考えに基づいている。特に1980年、イスラエルでの2ヶ月間の生活と
宗教的な絵画の研究が、それまでのマヤ文明、仏教、インド哲学、禅などの
影響に加えて、一層ファンタジックな世界にのめりこませるきっかけとなった様である。

12歳の時から、本格的に中南米の生んだ巨匠アルフレッド・シンクレアや
A・デユタリから愛されながら学び又、その後様々な作家達との出会いを通じて
修得した技法は、現在彼の画面の中で、時として抽象的な形態の組み合わせと構成
それもあるひとつの方向を持った秩序ある描写として独自に展開させている。

一見プリミティブで何の変哲も無いかのように見えるそれも、しばらくみていると、
彼が言うように魔術師の手を経て生み出されて来たのかも知れないと
私にも思えて来るのである。

この計り知れない魅力を持つ異邦人の作品を、この9月に行われた
パナマ近代美術館での個展出品作から作家自身が自選し、さらに新作を含めて
約25点を日本の美術愛好家の方々のために一部販売可能な作品として
当画廊シェーネにて展観いたします。
何卒、ご高覧賜りますよう本日茲に、ご案内申し上げます。